設立趣意書 

 


 戦後の高度経済成長期からバブル経済の破綻を経て、出口の見えない不況、政治不信、将来への不安が日本を覆っています。経済優先社会は地域コミュニティを崩壊し、人と人とのコミュニケーションを希薄にしています。今、自らのよりどころを失い、生きることに希望の持てない私たちがなすべきは、各々が助け合い、一人ひとりの力を十分に生かすことの出来る地域社会を、自らの力で再びつくりあげることではないでしょうか。

 すでに日本中のあちこちで市民による様々な活動が生まれ、地域を変えつつあります。NPO法施行後、日本で活動しているNPOの数は1万を超え、多くの行政が市民やNPO、ワーカーズコレクティブとの協働によるまちづくりを提唱するほどとなりました。

 しかし、NPOをはじめとした市民事業を営む団体の置かれている現実は厳しく、とくにその財政基盤はきわめて脆弱であると言わざるを得ません。行政からの補助金や委託事業に過度に依存せざるを得ない現状は、自律した市民による市民社会の実現という目的からすると課題が残ります。また、年齢、性別などにより金融機関から融資を受けにくい現実も市民事業を営む団体の事業展開を阻んでいます。市民の自由なアイディア、センス、そして市民としての経験が生きるためには、市民による自主的な財源を作り上げる事が必要不可欠です。

 一方、私たちは将来に備えるために、銀行や郵便局に預貯金をしていますが、そのお金がどのように使われているのか、関与することが出来ません。公共事業、原子力発電、ODA、遺伝子組み換え作物の研究等が、私たちの預貯金を原資に行われています。この巨額の資金の一部でも地域コミュニティの形成、活性化に使う事が出来るならば、私たちの暮らしは、もっと豊かに希望の満ちたものになるに違いありません。自分のお金を自分の見えるところで役立てたい、と願う市民は多いはずです。「東京コミュニティパワーバンク」の設立は、これらを実現する試みにほかなりません。

 私たちは、よその国や地域から資源や環境を奪い地域を衰退させてしまう今のお金の循環を、地域を豊かにする循環へつくり変えます。市民による市民のための資金循環のしくみとして、また地域に住む人の思いを大切に出来るしくみとして「東京コミュニティパワーバンク」を設立します。

 市民自身が地域社会に貢献する事業を応援し(出資し)、かつ、それを使いこなす(融資を受ける)、このことにより地域でお金が回り始めます。私たちは“出資する人と融資を受ける人が共同で作り上げる”、出資する人も融資をする人も“まちの作り手”として地域社会に貢献するための機能として「東京コミュニティパワーバンク」を設立します。

地域が働く場となり、どの人も生き生きと暮らす新しいコミュニティが生まれ、人と人とが助けあい信じあえる豊かな社会を、市民の手で築いていきましょう。

                                2003921

 

意志ある出資・意義ある融資